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【TOPICS】希少種 ジャコウアゲハ蝶の地球暦(活用事例紹介)

ジャコウアゲハは白亜紀以前の恐竜時代の空を飛んでいた、アゲハ蝶の中でも最古の部類。ウマノスズクサという野草と共生関係にあり、幼虫はこの草でしか育たないため、環境の変化によって現在は希少種となっている。草には毒性があり体内に蓄積された毒によって捕食者から身を守っている。

ウマノスズクサは「春分」にかけて芽を出し、約2週間ほどの成虫の期間が終わるとジャコウアゲハはウマノスズクサの葉に卵を生む。そして幼虫、サナギ、成虫と1世代は約2ヶ月でその一生を終える。ジャコウアゲハが蛹から羽化するのと同時に、地中から芽を出すウマノスズクサを見ていると長い共生関係の歴史を感じます。

蝶の活動期間は主に上半期。反対に一年の半分にあたる下半期は蛹となって越冬して過ごす。

上半期には「春型・夏型・秋型」と3世代が活動する。それぞれ個体の大きさも違い、成虫が吸汁する花の蜜も異なり、まったく違う環境下で過ごすことになる。蝶となった成虫はすぐにペアリングしてカップルとなり、主に太陽の出ている日中に活動する。世代によって過ごす季節の場面が異なるが、いずれも舞うことのできる約14日間の空は蝶にとっては濃密な時空間と言える。(日中に活動している時間は100時間ほど)

世代交代のときに草刈りをすることでより繁殖し、逆に卵や幼虫の時期に草刈りをしてしまうと激減します。
地球暦ではその切り替わりを明確に知ることに役立っています。(図で1.2.3期の区切り部分)

PDFはこちらから

 

ワークシート活用例 宮津裕一

※食草のウマノスズクサについて 参考サイト

※嗅覚を前足で感じる蝶の性質について 参考サイト

足元の自然観察から、地域の文化へ

希少種であるジャコウアゲハを静岡の長尾川の土手で見かけて、すぐウマノスズクサが自生していることに気づいた宮津裕一さん。宮津裕一さんは昆虫の飼育などの本の執筆も手がけ、草花や鉱物をはじめ自然観察など全般に詳しい元小学校の先生。自宅そばの河原で目にした蝶から、地域の生態系を知るきっかけとして数年前から保護活動をライフワークにしてきました。いまではあちこちにウマノスズクサが点在し、地域にジャコウアゲハが舞い戻って話題となっています。

 

何億年も繰り返されきた宇宙のデザイン

枯れた葉の裏や、風当たりの少ない木陰などを選んでサナギとなるジャコウアゲハ。芋虫の幼虫、成虫の蝶ともまったく違うその姿はよく見ると非常に宇宙的なデザインをしています。どうしてこのような形になっているのか分かりませんが、縄文土器などの装飾にも同じような自然の美の様式を感じます。

 


サナギを育てて羽化したジャコウアゲハの思い出

自宅の庭に放した1頭のジャコウアゲハ。初めての飼育でしたのでカップルとなる番(つがい)の相手も、卵を産むためのウマノスズクサもない環境でした。 2週間ほどしたある日、畑仕事をしていたときに私の周りをひらひらと舞ったことがありました。その時は気づかなかったのですが、後日、普段は開けていない小屋の中にわざわざ入ってきて私の机の上で死んでいたのを発見しました。その時にあぁ、あの時に舞っていたのはきっとお別れのあいさつだったのだなと思い、宮津先生に話したところ、他のアゲハと違いジャコウアゲハにはそういう不思議な習性があるとのこと。学校でも育てた子どもにあいさつをするように戻ることがあり人懐っこい性質があるそうです。(杉山開知)

 

2019/03/21 春分

部屋の中で育てていたサナギが春分ぴったりに羽化しました。今年は春が寒かったため全体的に羽化が遅く、早めに出てきたオスはちょっと寒そうです。このオスは桜が咲き終わる4月上旬まで空を舞い、3km離れた土手まで採蜜に出かけているのを偶然確認しました。

 

 


 

2019年4月5日 清明

ほんの数株だったウマノスズクサの保全活動をしてから数年が経ち、今では土手の一面にウマノスズクサの群生地が出来上がりました。春分から芽を出した株が、清明になり芽吹くように一斉に細長いつるが春の空に向かって顔を出しました。今年は春分あたりに気温が低かったのでジャコウアゲハの羽化も気候に合わせてこの清明にたくさん飛び立ちました。きっと今年は地域にたくさんの蝶が舞い繁殖することでしょう。

生物学と環境保護を研究する常葉大学の小杉山先生にジャコウアゲハの地球暦を見ていただきました。今後の展開が楽しみです。

 


2019年4月9日

次々とさなぎから羽化するジャコウアゲハ。最初はオスの方から羽化し、一足先に蜜を吸いながら力を蓄え、メスのさなぎが羽化するのを待っています。羽化の直前はさなぎが黒っぽくなり、ここまで来るともう数時間で蝶に変態します。

飛び立つジャコウアゲハのメス。光沢のある漆黒のオスと違って、メスは明るい褐色をしている。羽化直後だけこのように触れることができ、手のひらから飛び立たせることができます。

保全している土手のウマノスズクサの群落

土手のウマノスズクサも葉をつけ始めました。蝶の羽化の時期と見事に連動しています。

庭に植えたウマノスズクサにたどり着いたオスのジャコウアゲハ(杉山開知)

 


2019/04/16 土用入り(前日)

静岡の平均気温は3月が10℃、4月が15℃と、この1ヶ月で5℃も上昇した。変温動物の蝶にとって気温の変化はダイレクトに影響する。今年は3月春分付近がずいぶんと冷え込んだため、蝶の羽化も清明付近がピークとなり、土用入りで一斉に産卵をはじめました。

私の庭も食草が足りなくなり宮津先生が栽培自生させた土手のウマノスズクサをわけていただきました。

こちらはスミレを食草とするツマグロヒョウモンの幼虫。宮津先生が育ていたタチツボスミレの苗と一緒に分けていただきました。ジャコウアゲハとともに小さなオーレリアンの庭で一緒に育ててみたいと思います。

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